7月23日の中国高速鉄道事故から1カ月が経とうとしている。鉄道の安全、そして人命の重さが中国政府に突きつけられた事故だったが、もう1つ、特筆すべきことがある。それは中国の「報道」が変わったということだ。正直言って、筆者はその変化に驚きを隠せないでいる。

 8月2日、元上海駐在員から、「中国の報道、ついにここまできたか!」というメールを受け取った。メールには、共同通信が配信した「当局に『くそったれ』と中国紙」という見出しのURLが貼り付けてあった。

 その中国紙とは、7月31日付の「南方都市報」。広東省を拠点とし、「大衆に忠実」を旨とする発行部数140万部の総合紙だ。「メシが食いたきゃ政府批判はするな」が常識とも言える中国での報道の厳しさを知る私たちにとって、中国の大メディアのその大胆な見出しは驚愕すべきものだった。

事故直後から始まったメディアと当局の闘い

 事故の翌日の7月24日、中国共産党中央委員会宣伝部は各メディアに次のような通達を出した。

高速鉄道事故、中国当局が取材禁止命令か

事故の翌日に現場で救助作業を見守る人々〔AFPBB News

 「温州の高速鉄道事故については鉄道部(鉄道省)のリリースを報道すること、記者を取材に行かせないこと」――。

 さらに、「死傷者数は権威部門の公表した数字に従うこと。報道頻度を高めないこと。感動秘話(例えばタクシーの運転手がお金を取らなかったことなど)を多用すること。事故原因については深追いしないこと。事故を再分析する記事は書かないこと」の5つの文言が追加された。

 もちろん今回の事故だけに限らない。こうした報道を規制する通達は数限りなく、直近の上海では昨2011年11月のマンション大火災でも流れたという。これが中国の報道規制の実態である。