「本流トヨタ方式」の土台にある哲学について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」という4項目に分けて説明しています。

 ここ数回は「(その4)現地現物」に関する話をしてきました。前回は、現場には必ず裏組織というモノがあり、それを上手に活用することが大切だという話をしました。

 目に見えない人間関係の話なので、分かりにくかったかもしれません。今回は、筆者の撮ってきた写真をお見せしますので、そこから何を読み取るのか、具体的な事例でお話ししましょう。

 1枚の写真に写っている景色から何を読み取るかは、人によって異なります。日頃から何に関心を持ち、どのように洞察力を鍛えているかによって、見方が全く違ってくることがお分かりいただけると思います。

この写真から何が読み取れますか

釜山港の入り口付近で撮った写真。拡大表示してご覧ください。
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 右の写真は数年前韓国に講演に行った折に、釜山港の入り口付近で撮った写真です。数分間ご覧になって、気がついたことをメモしてから読み進めて下さい。

 以下、筆者がこの写真から読み取った事柄を列記してみます。

(1)トラックがタイヤを持ち上げて走っている。

中央に写っている白いトラックは、後ろから3つめのタイヤを持ち上げて走っています。これは世界中のトラックに取り入れられている「リフトアクスル」という技術です。

 1995年、筆者が物流管理部長に就任し、世界中の物流拠点を見て回った際に発見して以来、注意して見てきましたところ、欧米はもちろん、南米でもASEAN諸国でも広く使われていることが分かりました。残念なことに、この技術が使われていないのは日本だけでした。2010年以降は数回国内で見かけていますから、日本ではやっと緒に就いたばかりだと思います。

 なぜ、タイヤをわざわざ持ち上げて走るのでしょうか? 大きく分けて「通行料金」と「運行費用」の2つのメリットがあるといいます。

 小型トラックを真横から見ると前輪と後輪の2つがあります。前輪後輪とも左右にタイヤがありますから、左右のタイヤをセットにして「車軸」と捉えますと、小型トラックでは前車軸と後車軸の2軸からなっています。