3月20日、新型コロナウイルスの世界的感染を受けて開かれたG20首脳テレビ会議に参加した中国の習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

(ジャーナリスト・吉村剛史)

 中国湖北省武漢市に端を発した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症のパンデミック(世界的な大流行)の影響で1年延期となった東京オリンピック。国際オリンピック委員会(=IOC、トーマス・バッハ会長)と東京大会組織委員会(森喜朗会長)などの話し合いで、2021年7月23日を新たな開幕日とすることで決定した。

 実はこの日は中国共産党結党100周年の記念日当日であり、中国においてはこの前後に国家レベルの祝賀行事があるはずだが、世界の要人は東京に集まり、その拍手と視線は「人類の新型ウイルス克服」を象徴することになる東京大会開会式に注がれることになる。

 国際社会からは当初の発生情報の隠蔽なども疑われ、世界保健機関(WHO)から台湾を締め出してきたことにも厳しい視線が注がれている中国にとっては、あたかも「国際社会からの意趣返し」を受けているかのようなかっこうとなる「苦い記念日」となりそうだ。

新型コロナの世界的感染で苦しくなった中国の立場

 中国共産党は、1921年7月23日、上海で中国共産党第1次全国代表大会(第1回党大会)を開催し、結成されたとされている。大会の舞台となったのは東京帝国大(現東大)留学から帰国した李漢俊の上海の自宅で、国際共産主義組織(コミンテルン)の主導のもと、陳独秀や毛沢東らが中国各地で結成していた共産主義組織をまとめあげる形で発足した。「党」はその後、現代中国を象徴し、中国を世界第2位の経済大国に押し上げた牽引力となっただけに、同年7月には結党100周年記念の盛大な関連祝賀行事などが見込まれている。

 一方、今回の新型ウイルスの世界的な感染拡大を受け、「1年程度の延期」が決まっていた夏季五輪の東京大会に関し、大会組織委では2021年夏までの実施に向けて日程の確定や会場の確保を最優先に作業。最終的な日程案は、日本時間で2020年3月30日夕、IOCのバッハ会長と、橋本聖子五輪相、小池百合子東京都知事、組織委の森会長によるテレビ会議で日本側が提案し、合意。これを受けたIOC理事会で決定した。東京五輪は2021年7月23日(金)開会、同8月8日(日)に閉幕する17日間で、パラリンピックは8月24日から9月5日まで。

 日程の検討では、新型ウイルス問題の終息の見通しや、春開催と夏開催の利点、欠点なども考慮、比較されたといい、さらに2021年7月22日に任期満了を迎える東京都議選や8月15日の終戦記念日を避けるなどで決定。中国共産党の記念日との重複は偶然だと思われる。