
第二次トランプ政権の誕生で一気に政策の方針転換を表明したアメリカ。その影響は、カナダやメキシコに生産拠点を置くトヨタ、ホンダ、日産、マツダなど日本車メーカーにも及ぶことになる。一方で日産傘下でありながら現在、ホンダ・日産の経営統合の協議とは距離を置いている三菱自動車に、シティグループ証券などで自動車産業のアナリストを長年務めてきた松島憲之氏は注目する。アメリカの政策転換が日本の自動車産業に及ぼす影響と、岐路に立つ三菱自動車の動向を松島氏が解説する。
トランプ政権2.0の脱環境政策が始動
トランプ大統領がさっそく動き始めた。バイデン政権の環境重視政策を否定し、就任初日にパリ協定から脱退した。これは事前に宣言していたことなので驚きはないが、政権交代による180度の政策転換は米国らしい。政権交代がほとんどなく政策の継続性を重視する日本では考えられない急速な動きだが、この変化のスピードに日本政府や日本企業が対応できねば、日本経済は再び悪化するだろう。
トランプ政権2.0での政策は「環境よさようなら、収益よこんにちは」だが、さまざまな業界がその政策に追随する。代表的な例が金融機関だ。
米国の大手金融機関は、脱炭素を目指す国際的銀行連合の「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から脱退した。ゴールドマン・サックスが2024年12月6日にNZBAからの脱退を発表、その後はドミノ倒しのようにウェルズ・ファーゴ、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェースが続いた。脱退した銀行は、当然だが気候変動に配慮したもうかりにくい経営戦略を変更し、逆に排除されていた石油産業などトランプ政権2.0が再注力するもうかる従来型産業への投融資を強化するはずだ。運用最大手ブラックロックなどの投資家も運用姿勢を転換しており、本格的な揺り戻しになっている。
気候変動に対する優先度を下げる動きが米国の金融機関でスタートしたことで、世界にその動きが拡大するだろう。日本の金融機関も早くその動きに追随する必要があるが対応は遅れるだろう。脱炭素の実現は長期的には極めて重要だが、一挙にそれを達成するという夢物語をあきらめて、タイムスケジュールを見直すことが今まさに求められているのだが。