写真提供:Photothek Media Lab/DPA/Artur Widak/NurPhoto/日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 デジタイゼーション、デジタライゼーションを経てデジタル化の最終目標となるデジタルトランスフォーメーション(DX)。多くの企業にとって、そこへ到達するためのルート、各プロセスで求められる施策を把握できれば、より戦略的に、そして着実に変革を推し進められるはずだ。

 本連載では、『世界のDXはどこまで進んでいるか』(新潮新書)の著者・雨宮寛二氏が、国内の先進企業の事例を中心に、時に海外の事例も交えながら、ビジネスのデジタル化とDXの最前線について解説する。今回のテーマは、次世代自動車「ソフトウエア定義車両」(SDV)の鍵を握る「車載OS」。テスラ、トヨタ、ホンダが開発中の“車の頭脳”はどこまで進化し、どんな新しい価値を提供しようとしているのか?

SDVの中核的な役割を果たす「車載OS」

 従来、自動車の付加価値は、エンジンや車体などハードウエアが中心であったが、現在、ソフトウエアへの移行が急速に進みつつある。その流れを作り出しているのが、「電動化」と「知能化」という2つの大きな競争軸である。

 電動化は、カーボンニュートラル(CN)による社会的価値の視座から電動車(EV)化として捉えることができ、これまでのガソリンといった化石燃料を利用する自動車から、バッテリーに充電した電気のみで走行する電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)などのEVへの転換が進みつつある。

 知能化は、自動車に自動運転や先進運転支援システム(ADAS)などの先進的な技術を組み込むことで、人による運転から人工知能(AI)による自動運転への移行を図ることを指す。これには、単に移動手段を進化させるだけでなく、社会全体の安全性や効率性、持続可能性を向上させる可能性が秘められている。

 これら2つの競争軸において重要視されるのが、「ソフトウエア定義車両(SDV)」の考え方である。自動車メーカーにとって、走行性能や安全性能、各種装備の機能など車両の性能全体をソフトウエアによって定義し、制御する新たなモデルをいかにして設計し開発するかが問われている。

 このSDVの概念を実現する上で中核的な役割を果たすのが、「車載OS」である。