(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年6月28日付)

独裁者が支配する国は次第に暴力的になっていく

 地球上で人口が最も多い国は、大国の庇護など必要としない。インドは東西冷戦の時代でも、そのほとんどの期間で非同盟の立場を維持した。

 米政府関係者のなかには、「良く言っても」その程度だと皮肉を込める向きもいるだろう。

 現在のインドの指導者は権力の集中、そして宗教と国家について、米国政治思想の古典「ザ・フェデラリスト」とはいくぶん離れた考え方の持ち主だからだ。

 したがって、インドが米国寄りになることには運命的あるいは必然的な要素は一切ない。

 ところが、中国の振る舞いのどこかが、以前はどっちつかずの態度を取っていた国に、差し当たりは米国との(同盟とは言えないまでも)合意を促すことになった。

 これは中国のアンフォーストエラー(敵から強いプレッシャーを受けていないのに犯したミスのこと)であり、同種のミスと比較すると、これ以上に重大なエラーは戦争以外にはあり得ないかもしれない。

恥をさらした中国・ロシアのミス

 言い換えれば、ニュースになった独裁国家の判断ミスのなかで、ロシアで起きているゴタゴタは2番目に重要なものだということだ。

 1番目ではない。

 米国の軍事力に庇護を求めるところまでインドのナレンドラ・モディ首相を追い込んだことには、今世紀を形作る事態に発展する可能性が秘められているからだ。

 一方のニュースは、国内の行政府の幹部を掌握できていないという話であり、他方は、対外政策でつまずいたという話だ。

 だが、どちらも恥ずかしい話だという点が共通している。