(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年4月12日付)

日本とドイツで明暗を分けたものは何だろうか

 日銀総裁が黒田東彦氏から植田和男氏に交代した今、日本は超金融緩和策を捨てるのだろうか。

 答えはどうやら「ノー」のようだ。

 高い評価を得ている著名な経済学者の新総裁は、日本が現在採用している金融政策の2本柱――マイナス金利と長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)――を維持することが適切だと強調した。

 では、これらの施策に固執することも正しいのだろうか。

 総じて言えば「イエス」だと筆者は考える。

 同僚のロビン・ハーディングが先日論じたように、それはリスクがないからではない。これに代わる施策もリスクをはらんでいるからだ。

 日銀の資産買い入れ(いわゆる量的緩和)やその後に導入されたYCCを仮に無視しても、とにかく際立つ事実は、短期の介入金利が1995年以降ずっと0.5%以下であることだ。

 ある国がこれほどまでに緩和的な金融政策をほぼ30年も続けながら、弱い需要と低インフレをいまだに心配しているなどと思っていた経済学者やエコノミストが果たして何人いただろうか。

 これは明らかに非常に根深い構造的な現象だ。

 原因は何なのか。それは慢性的な超過貯蓄にほかならない。