(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年3月31日付)

閉鎖性の高い通貨にもかかわらず人民元が国際決済で使われる比重が急速に高まっている

 この3月、ロシアと中国が米ワシントンに新たないら立ちをもたらした。ウクライナなど多くの問題について外交の協調を演出して見せたことがその主な理由だ。

 だが、いら立ちはマネーのせいでもある。

 中国の習近平国家主席が先日モスクワを訪れた際、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「ロシアがアジア、アフリカ、および中南米の国々と行う代金決済」に中国人民元を導入すると約束した。

 米ドルから人民元に切り替えるというのだ。

 しかもこの約束は、急増している中ロ貿易でモスクワが人民元の利用をますます増やし、ロシアの中央銀行の外貨準備に占める人民元の割合も引き上げている最中になされた。

 こちらも「有毒な」、つまり米国の資産へのエクスポージャーを減らすためだ。

プーチンの脅しの威力

 それほど騒ぐ話なのだろうか。

 つい最近までなら、西側のエコノミストのほとんどが「全然大したことない」と答えていただろう。

 中国の資本勘定は閉鎖的であり、人民元の利用拡大を妨げると長らく考えられてきたからだ。

 ところが今、プーチン氏の発表には感情を揺さぶる力がいつになく強く備わっている。

 なぜか。