脱出スライドを使って避難する航空事故は世界各地で起きている。写真は2015年、火災警報のため乗客を脱出させた中国・海南航空の事故(写真:AP/アフロ)

緊急着陸し、脱出スライドで乗客を避難させたが、うまく着地できず重傷者1人を含む5人がけが——。今年1月7日に爆破予告を受けて中部国際空港に緊急着陸したジェットスター・ジャパン501便の事故は記憶に新しい。国土交通省が担当CA(客室乗務員)らに事情聴取を実施したが、そもそも、成田空港会社が爆破予告の電話を受け取ってから離陸までするまでなぜ機長に知らせなかったのか、警察への連絡がなぜ遅くなったのかなど、疑問は解消されていない。さらに保安要員でもあるCAの配置には課題が残ったままなのは日本の航空各社に共通する。航空当局や航空会社は、緊急時への対応をあらためて見直す必要がある。

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客室乗務員の対応に問題はなかったが・・・

 事故では、荷物を持ったままドアに向った乗客もいたとされており、国交省は、1月12日からジェットスターへの安全監査を実施して避難誘導の状況についても調べてきた。

 最終的に当局は、CAたちは「マニュアル通りに対応していた」と業務に問題はなかったと結論づけたが、肝心なことが分かっていない。

 この緊急脱出に至ったのは、成田国際空港が爆破予告の電話を受けてから当該機が離陸するまで17分もあったのに、機長やジェットスターに連絡を入れなかったことも一因である。

 いったいこの17分間に何をしていたのか。

 たしかにテロ予告が本物か偽物かどうかを判断するには時間が必要であろう。しかし、とりあえず安全サイドに立って機長に一報を入れることは危機管理のイロハのイであるはずだ。

 その予告電話の1週間ほど前にも、台湾の航空会社が運航する便について成田空港に同様の爆破予告があり、それはいたずら電話であった。いずれも言語が英語で発信元がドイツだったと報道されている。

 ジェットスター機への予告電話があったときに、そうした情報も含め機長に伝えていれば、違った結果になっていたかもしれない。