3月16日、首脳会談後に銀座の日本料理店で会食した岸田文雄総理と尹錫悦大統領は、「二次会」で行った銀座のレストラン「煉瓦亭」でともにオムライスなどを楽しんだ(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 北朝鮮の、韓国や日米を罵る言葉は極めて下品だ。それだけに批判された方も呆れるだけで何ら痛痒を感じない。

 その一例が、平昌オリンピックの時に韓国を訪問し、韓国で「かわいい」と称賛された、金正恩氏の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会副部長の言葉である。

 金与正氏は、2022年11月24日付の談話で、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が推進する北朝鮮への独自制裁案を激しく批判、韓国を「ずうずうしくて愚昧な連中」と下品かつ強烈な言葉で罵った。だが国連安保理決議に違反したミサイル発射を繰り返したのだから、非難さえるべきは北朝鮮である。「面の皮が厚い」とはまさにこのことだろう。

 そればかりではない。2020年6月の談話では金正恩体制を非難するビラを風船につけて北朝鮮に向けて飛ばした脱北者を「家の中の汚物」「クズ」と叫んだ。

 北朝鮮を怒らせたくない文在寅政権はこの金与正氏の言葉に呼応し、ビラ散布禁止法案を制定したが、これは愚の骨頂であった。北朝鮮に振り回されただけで、韓国に何のメリットももたらさなかった。国会でそんな法案を通すくらいなら、むしろ北朝鮮に「脱北者に批判されないよう人権を守れ」と言うのが韓国の大統領として正しい対応だったのではないだろうか。

 だが3月16~17日に日本を訪問し、岸田文雄首長と会談を行った尹錫悦大統領を批判する、韓国の野党・市民団体・左派系メディアにもこれと似たところがある。

 無意味な言葉の羅列で尹大統領を非難する。そうすることで相手を屈服させようとしている。

 しかしこれは無駄な努力に終わるだろう。ということは左派系の人々のメンタルは北朝鮮と余り変わらないということか。