(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年3月14日付)

米国の大統領と英国の首相が戦艦の上で肩を並べるとき、歴史的な響きを避けるのは難しい。
1941年8月、フランクリン・ルーズベルトとウィンストン・チャーチルは大西洋憲章に署名するためにニューファンドランド島沖で会談し、戦後世界に向けた共通のビジョンを打ち出した。
ジョー・バイデン、リシ・スナク、アンソニー・アルバニージー3氏の会合の舞台は太平洋だった。
米国、英国、オーストラリアの首脳は3月13日、原子力潜水艦をオーストラリアに供与することを軸とした武器・技術協定「AUKUS(オーカス)」の具体策をまとめるために戦艦ミズーリで会談することになっていた。
AUKUSの地政学的な意図
AUKUSは大西洋憲章のような壮大な哲学的声明ではない。だが、根底にある地政学的な意図は明らかだ。
「アングロスフィア」(歴史的、文化的な絆が深い英語圏世界)の国々が同盟関係を新たにする。
今回は、太平洋で海軍の支配的地位を固めようとする中国の努力に対抗するためだ。
AUKUSは20世紀の歴史にルーツを持つが、明らかに21世紀に向くパートナーシップではない。
英国はもう、太平洋に植民地や基地を持つ帝国ではない。オーストラリアの経済的な関係は今や主にアジアとの関係で、中国が最大の貿易相手国だ。
米国人にしてみると、オーストラリアと英国はある意味で、ワシントン・ポスト紙が潜在的に「近代史上最も重大な3カ国防衛技術パートナーシップ」と呼ぶものの相手として奇妙な選択肢に思える。
何しろ米国は、中国本土にはるかに近い日本と韓国に軍事基地を構えている。