(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年3月9日付)

中国の通信機器メーカー、ファーウェイは米国から目の敵にされている

 思考実験を一つやってみよう。

 もし台湾がこの世の存在していなかったとしても、米国と中国はやはり対立していただろうか。

 筆者の勘では、対立していた。覇者と新興勢力との敵対は人類史の一部だ。

 フォローアップの頭の体操は、もし中国が一党独裁国家ではなく民主国家だったとしたら、そのような緊張関係が続くかどうか、というものだ。

 これに対する答えはそれほど簡単に出ないが、中国の政府が選挙で選ばれたものだったら、米国主導の世界秩序に対する怒りが多少弱まるとは言い切れない。

 それに米国がスポットライトを中国と喜んで分け合う姿も想像し難い。

荒唐無稽と言えなくなった米中紛争

 こうしたことから、米中紛争はもう荒唐無稽な話ではないと言えそうだ。

 国民性というものは簡単には変わらない。中国はその名の通り真ん中の王国であり、西洋に辱められた時代の償いを望んでいる。

 片や米国は、倒すべきモンスターを捜し求める危険な国だ。どちらも自分のタイプの通りに行動している。

 問題は、自分たちが成功しなければならないと両国が言い張る状況で世界の安定が保たれるかどうかだ。

 今日見られる米中対立の膠着状態に取って代わる可能性が最も高いのは、和気あいあいとした意見の一致ではなく、戦争だ。

 中国の習近平国家主席は先日、これまでよりも踏み込み、中国の「封じ込め」「包囲」「抑圧」の背後にいるのは米国だと名指しした。

 挑発的な発言だったが、厳密に言えば間違ってはいなかった。