コオロギ(写真:アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 ニュース配信サイトに寄稿していれば、執筆者として批判を受けることは想定すべきことだ。だが、記事の内容に触れることもなく、何ら根拠も示さずに記事と執筆者の人格を誹謗中傷することは、正当な意見、論評の域を逸脱して、社会的評価を低下させ、名誉権の侵害(名誉毀損)にあたる。

 まして、虚偽の事実(つまり、嘘やでっちあげ)で記事や人格を攻撃することは、もっと悪質だ。

炎上した前回の「コオロギ食」の記事

 私がまとめた【「コオロギ食」への差別行為が横行、嫌なら食べなきゃいいだけなのになぜ】と題する記事が配信されたのは、先週3月6日のことだった。これが、いわば“炎上”したようだ。ツイッターでは表題にある「差別行為」が一時トレンド入りもして、記事や私に対する批判的な書き込みが相次ぎ、拡散した。

 ところが、この書き込みのほぼ全てが記事内容に触れることがない、触れても事実と異なること、さらには虚偽事実をでっちあげたものばかりで、およそ看過することができない状況にある。

 その根源にあるコオロギをはじめとする昆虫食への底知れない嫌悪と偏見、そこから発生した「差別行為」の現実について言及する。

 私が「コオロギ食」についてまとめたのは、徳島県の県立高校でベンチャー企業から提供を受けたコオロギパウダーを使ったコロッケを、希望者が給食で試食したところ、学校にクレームの電話や批判が相次いだこと。Pascoで知られる「敷島製パン」が、コオロギパウダーを配合したパンやフィナンシェなどを通販限定で販売していたところ、先月中旬ころから不買運動の呼びかけやデマや陰謀論が飛び交うようになったこと。

 これらを前提に、私が生まれ育った地域では虫を食べる文化があったことで、大学進学を機に上京すると、「長野って、虫、食うんだろ?」と差別的な言葉をかけられた体験から、昆虫食には嫌悪や偏見が伴うことを綴ったものだった。

キルギスでは食用にコオロギ養殖事業が立ち上がっている。写真は揚げたコオロギをほおばるビシュケクにある同事業所のスタッフ。2021年6月撮影(写真:ロイター/アフロ)