(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年3月1日付)

ロシアによるウクライナ侵攻の1周年記念は、高揚したレトリックで迎えられた。
特に目を引くのは、米国大統領のジョー・バイデンが訪問先のワルシャワで「ウクライナに対する我々の支援は揺るがない、NATO(北大西洋条約機構)は分断されない、そして我々は疲弊しない。領土と権力に対するプーチン大統領の卑怯な欲求は満たされない。ウクライナの人々の愛国心が勝利する」と語ったことだ。
こうした心情は立派だ。だが、このコミットメントは果たして本物だろうか。
西側は実際に、独立した民主主義国としてのウクライナの存続を確実にするために必要なことを何でもやるのか。
交渉による紛争解決を要求している人でさえ、今頃はもう、ウラジーミル・プーチンがウクライナを自分の帝国に吸収することを西側は許さないということを本人が認識することがこの結果の必要条件であることに気づいたはずだ。
西側の価値観を脅かすプーチンの攻撃
過去1年間のロシア軍の失敗から、プーチンもウクライナを吸収する能力に多少の疑問を抱くようになったかもしれない。
だが、それでもまだロシアが勝つと考えている。
主たる敵対国の相対的規模と人的資源などのロシアのリソースに対するプーチンの支配力を考えると、それは非合理な見方でもない。
決定的に流れを変えられる唯一の勢力は、ウクライナの決意と軍事的、金銭的な西側のリソースの組み合わせだ。
バイデンが説明したように、この支援を与えるべき強力な理由がある。これは特に欧州に当てはまることだ。
プーチンの攻撃は、戦後欧州が築かれる基盤となった中核的な価値観と利益を脅かす。国境の不可侵、国家間の平和的な協力、そして民主主義がそれだ。
攻撃は特にロシアに最も近い国々、少し前までソビエト帝国の内側に入っていた国々の安全を脅かす。
もしプーチンが勝ったら、次は誰が出てくるのか。