ウクライナ軍に供与されているHIMARSの射程が大幅に伸びることはロシア軍にとって大きな痛手となる(写真はラトビアに配備されているHIMARS、2022年9月26日撮影、米陸軍のサイトより)

 ウクライナ軍の反撃を予想するにあたって、最近までのウクライナ軍とロシア軍の戦いを振り返って、確認する必要がある。

 侵攻開始から7~9か月のロシア軍の戦車の損失は継続的に多かった。これらは、侵攻初期、ハルキウ正面やへルソンでの機動的な戦いの結果だ。

 ところが、開始から10か月から現在までは、ロシア軍が塹壕内に入り防御態勢に移行した。一方のウクライナ軍は戦力回復に力をいれたためか、ロシア軍戦車の損失は大幅に減少しているのだ。

ロシア軍戦車の月毎の損失推移

出典:ウクライナ軍参謀部発表資料から筆者が作成

(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイトでお読みください)

 ウクライナ軍は9~10月北東部のハルキウ~イジューム~リマンを、11月へルソンを奪還。

 その後、ウクライナ軍主力は引き続き攻撃する様子を見せつつも、深追いせずに攻撃を停止していた。

 ウクライナ軍は、疲労した戦力を回復し、反撃準備に取り掛かっていたからであろう。

 一方、ロシア軍はバフムート周辺、ドネツク市西部郊外、ドネツク州西部で攻撃作戦を継続するものの、ウクライナ軍に撃退され、その成果は極めて小さかった。

 その他の地域に配置されているロシア軍は塹壕を掘り、防御態勢に転換した。

 ウクライナ軍は、深追いするとロシア軍の罠にはまる可能性があることを恐れ、概ね接触線を維持していた。

 ロシア軍の戦い方について、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は2月14日、ロシアがウクライナでの戦争で「戦略的、作戦的、戦術的に負けた」という認識を示した。

 つまり、両軍の戦略・戦術において、ロシア軍にはそれがなく、一方、米欧が支援するウクライナ軍は優れているということなのだろう。

 米国のロイド・オースティン国防長官は同日、「ウクライナは勢いをつけようとしている、春には攻勢を開始するだろう」という見方を示した。

 私は、この2人の発言には「これからの戦いでは、ウクライナ軍は予想できない奇襲戦略(攻撃)があるよ」ということを含んでいると思う。

 そこで、ウクライナ軍はこれからどのような戦い方をするのかを考察する。