(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年2月8日付)

この御仁が大統領だったときにウクライナ侵攻が始まったら世界はどうなっていただろうか

 ウィンストン・チャーチルではなくハリファックス卿が宰相だったら、英国は1940年に戦い続けるか。

 リチャード・ニクソンが「開放」していなかったら、中国は超大国になったか。

 ローマ帝国のピラト総督がイエスを処刑にしなかったら、どうなっていたか――。

トランプ時代にロシアが侵攻していたら?

 歴史の事実に逆らう想定には一定のレパートリーがあり、1年前までは、ネタがかなり陳腐化していた。

 そこへ、この室内ゲームに新しい設問が加わった。

 ドナルド・トランプが米国大統領だった頃にロシアがウクライナを侵攻していたら一体どうなったか、という問いだ。

 想像してみてほしい。

 米国第一を掲げる大統領が目をそむけ、武器が枯渇したキーウ(キエフ)が陥落し、張子の虎であることが露呈した西側が立ち尽くすなかで世界中の独裁者がほかの標的を攻撃する。

 米国の共和党に対するこの低い評価は良いことだ。

 トランプまたはトランプと似た誰かが再び米国を率いることになった場合に備え、自国の安全保障について準備するよう各国を駆り立てるからだ。

 ドイツと日本が好例だ。民主主義の武器庫はこれから大きくなっていく。