(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年1月30日付)

過去半世紀にわたり、政府と中央銀行がいっそう緊密に連携して経済成長を管理した結果、景気後退の回数が減り、到来する間隔も長くなった。
多くの場合、予想よりも短期間で軽く済んだ。
そのような緩やかな傾向が続いた後、今ではほとんどの人が長くて辛い景気循環を想像できなくなっている。
だが、世界経済は今、ここ数十年間に一度も見られなかったような局面に突入しようとしている。
政府の救済で短くなった景気後退
景気後退期における救世主としての政府への信頼感が、多くの人の人生の大半にわたって心のなかに入り込んでいった。
1980年以降に限ってみると、米国経済が景気後退に陥っていた期間は全体の10%にすぎない。
これに対し、第2次世界大戦が終わった1945年から1980年までは20%近くあったし、1870年から1945年にかけては40%を超えていたから、かなり短くなっている。
いくつかある理由のうち、ますます重要になっているのが政府による救済だ。
米国、欧州連合(EU)、日本、英国で発動された景気刺激策(政府支出と中央銀行による資産購入の合計)の対国内総生産(GDP)比は、1980年と1990年の景気後退では1%で、2001年には3%に増加した。
それが2008年には12%になり、2020年には35%に達している。