「築地果汁創作所 大井町店」を開店したパラリンピアンで起業家の初瀬勇輔氏

2022年11月、東京・大井町の住宅街に、あるフルーツサンド専門店がオープンした。「築地果汁創作所 大井町店」。経営するのは、視覚障害者柔道の全日本選手権で7連覇を果たし、2008年の北京パラリンピックにも日本代表で出場した初瀬勇輔氏だ。同氏は、障害者の雇用支援から、産業医の紹介、病院内のコンビニエンスストアの運営まで、障害者と医療に関わる分野で次々と事業を興している「連続起業家」でもある。そんなパラリンピアンが見る障害者雇用の現在地と課題は何か。

【これまでの連載記事】
夏季パラリンピックを2回開催した唯一の都市、東京はレガシーを残せるか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72051
障害ある人に合わせた職場はこうつくる、50年蓄積したオムロン太陽の知見
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72515
なぜ大分で世界最高峰の車いすマラソン大会が開催されているのか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72895
東京パラリンピックから1年で見えた課題、「終われば元通り」をどう変えるか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73234

(田中 圭太郎:ジャーナリスト)

2008年北京パラリンピックの日本代表

 大きめにカットされたキウイ、ミカン、イチゴ、メロンと、クリームがたっぷり入った「ごろっと4種のフルーツサンド」。あんことイチゴ、バター、クリームのハーモニーが楽しめる「あんバターいちご」・・・。色鮮やかなフルーツサンドとカットフルーツがショーケースに並ぶこの店は、JR大井町駅(東京・品川区)から徒歩で7分ほどの場所にある「築地果汁創作所 大井町店」だ。

店頭に並ぶフルーツサンド

 経営しているのは病院内のコンビニエンスストアなどを運営するkamaben。駅ナカ催事などでフルーツサンドを販売するUNDERWATERに話を持ちかけて共同で立ち上げた。使われているフルーツは渋谷区にある創業80年の老舗高級青果店「ハヤシフルーツ」で仕入れているほか、レシピは福井県の「Restaurant le jardin(レストラン・ル・ジャルダン)」のシェフパティシエの工藤隆浩さんが考案したものだ。

 kamabenの代表取締役を務める初瀬勇輔氏は、緑内障によって両目の視力を失った。30歳のときに起業し、障害者雇用の支援や人材紹介などを事業とするユニバーサルスタイルを立ち上げ、現在も代表取締役も務めている。

 初瀬氏は起業家であると同時に、パラリンピアンでもある。

 視覚障害者柔道の全日本選手権で7連覇したほか、アジア太平洋地域のパラスポーツの大会としてかつて開催されていた2006年のフェスピックや、その後継の大会である2010年のアジアパラ大会で金メダルを獲得した。2008年の北京パラリンピックにも日本代表として出場している。

初瀬氏(左)は全日本視覚障害者柔道大会で7連覇を果たしている(写真:SportsPressJP/アフロ)