(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年1月21・22日付)

モノ不足の時代にあって、悲観的な経済予想には全く事欠かない。
シンクタンクの英レゾリューション財団は、英国の平均実質所得が1年前から7%減少したと指摘し、所得が2022年1月の水準に戻るまでに4、5年の歳月がかかると予想している。
全く増えない実質可処分所得
だが、もし予想がひどいとしたら、本当に恐ろしいのはバックミラーに映る過去の光景だ。
英国経済は丸一世代もの失意のどん底、ゆっくりと進む経済的な大惨事に陥っている。国民1人当たりの実質家計可処分所得は15年間にわたって、ほとんど増えていないのだ。
これは尋常ではない。
英国では1948年以来、この購買力の指標は安定的に上昇し、30年ごとに倍増してきた。1978年の実質家計可処分所得は1948年の約2倍となり、2008年には再び2倍になる寸前まで行った。
そこへ金融危機が訪れ、流れが中断された。現在の購買力は、あの危機以前のレベルに戻っている。
この点については、もう少し論じる価値がある。極めて異常だからだ。
危機前のトレンドが続いていたとすれば、典型的な英国人は今頃、40%豊かになっている。ところが、実際は全く進歩がなかった。
国際金融協会(IIF)が今、次の「失われた10年」について語っているのも無理はない。