新しい体制――欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の傘の下での各国間の協調に基づくシステム――を理解することができず、プーチンは欧州大陸全体からロシアを孤立させる羽目になった。

 米ジョージタウン大学教授のアンゲラ・ステントの言葉を借りるなら、プーチンは1700年代に「ピョートル大帝によって開けられた欧州への窓を閉めた」。

エリート層から核戦争の声

 もしプーチンに、ロシアが超大国の下の階層に永遠にとどまることを受け入れる気があったら、ロシア国家として均衡をもたらす中規模国家の役割を果たすチャンスがあった。

 ところがプーチンは、ウクライナで手を広げすぎた。

 皮肉な結果は、ロシアは恐らくこの戦争が終わった時、世界的な大国としてさらに力が衰えていることだ。

 ロシアの切羽詰まった状況から、同国エリートの一部はニヒリズムに走り、テレビ評論家は核戦争とアルマゲドンについて夢想している。

 戦闘継続を訴えているロシアの戦略家は次第に、現実的な勝利の見通しがあるために戦い続けるよう声を上げているのではなく、敗北は考えることさえ辛すぎるためにそうしている。

 ロシア軍の元諜報大佐で、今や閉鎖されたカーネギー財団モスクワセンター所長を務めたトレーニンは暗い内容の寄稿で、「ロシアにとって降伏へ至る理論上の道筋は存在する」ものの、「国家的な惨事、カオスに陥る可能性、そして無条件の主権喪失」を伴うため、この選択肢は受け入れられないと主張している。

真のロシア愛国主義者とは

 トレーニンはその結果を恐れ、たとえ「何年も多大な犠牲」を払う必要があるとしても、ロシアは「自国の主権と一体性を守る戦士国家として」戦い続けるしか選択肢がないと結論づける。

 そして、この血みどろの道筋をたどるためには「エリートの無条件の愛国心」が必要だと訴える。

 だが、これは非常に奇妙な愛国主義の定義だ。

 一体どんな愛国的ロシア人が、国をより貧しくし、一層孤立させ、より独裁的で世界中で忌み嫌われる国にしている残忍な侵略戦争において、同胞たちを死に送り込み続けたいと思うのか。

 ロシアの真の愛国主義者――その多くは刑務所に送り込まれたか、亡命生活を送っている――は、プーチンとプーチンの戦争を止める決意を固めている人たちだ。

 それが起きた時に初めて、ロシアは道義的、経済的、国際的な地位を再建するチャンスを手に入れる。

(文中敬称略)

By Gideon Rachman
 
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