(写真:ロイター/アフロ)

 米アップルが、インドで同社初の直営店をオープンするために人員を募集していると、英フィナンシャル・タイムズが1月8日に報じた。インド事業を拡大するとともに、生産の多様化を目指し、中国への過剰依存から脱却する方法を模索しているという。

 アップルは世界第2位のスマートフォン市場であるインドで、2023年1~3月期中にも最初の旗艦店を開設する予定で、すでに従業員の募集を始めたと報じている。

技術スペシャリストやシニアマネジャーなど数百人採用へ

 23年1月6日、アップルの募集サイトには、技術スペシャリストやシニアマネジャー、店舗責任者、技術サポートスタッフなど計12種の職種が掲載された。それらのジョブディスクリプション(職務記述書)の多くは小売店に言及している。

 フィナンシャル・タイムズによれば、アップルの直営店「Apple Store」の一般的な店舗は100人以上の従業員を抱えている。また、募集サイトに記載された「マーケット リーダー」という役割は複数のApple Store店舗にわたり各チームを管理すると説明されている。アップルの直営店を巡っては西部の金融都市ムンバイで、約2000平方メートルの店舗が23年3月にもオープンすると報じられているが、計画はこの1店舗だけでなく、複数直営店の出店ではないかと同紙は伝えている。12種の職種の合計募集人数は、数百人規模になる可能性があるという。

 これとは別に、ムンバイと首都ニューデリーの少なくとも5人の人物が、Apple Storeに採用されたと、ビジネス向けSNS(交流サイト)の「LinkedIn(リンクトイン)」で明かした。これらの店舗についてアップルはまだ発表していない。また、ある人物は、「Genius(ジーニアス)」と呼ばれる技術サポートスタッフの責任者を任されたと投稿した。別の人物はシニアマネジャーに採用されたと明かした。アップルのインド採用責任者はこれらの投稿に対して、祝福のメッセージを投稿した。

インド生産拡大と直営店の関係とは

 アップルは米国や日本などで展開しているApple Storeをインドで出店していない。その代わり、インドの地場小売業者と提携して「Apple Premium Resellers」というフランチャイズ方式でアップル専門店を展開したり、印ネット通販大手フリップカートを通じてアップル製品を販売してきた。

 インドではApple Storeのような店舗は「シングルブランド・リテール」と分類される。その外資比率が51%を超える場合、金額ベースで約30%の製品・部品をインド国内企業から調達しなければならない。

 これが、いわゆる「30%調達ルール」。だが、アップル製品は大半が中国で製造され、部品も中国などのインド国外で作られていたため、この要件を満たせなかった。