(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年1月5日付)

新型コロナウイルス発生前の最盛期には、中国人が世界各地を旅行するのに使ったお金の総額はポルトガルの国内総生産(GDP)とだいたい同じ規模で、2500億ドルを少し超えていた。
2019年に中国本土から外国旅行に出た国民の数はおよそ1億5500万人で、ロシアの人口を少し上回っていた。
同じ年に中国人が外国で高級品の購入に費やしたお金は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の現在の株式時価総額900億ドルを上回っていた。
3年ぶりに戻ってくる巨人
このように足し合わせるとすさまじく大きくなる「世界旅行の巨人」が帰ってくるとなれば、その強さを維持していようと若干弱くなっていようと、経済に及ぶ影響は甚大だ。
ただ、それ以上に重要なのは、彼らの姿が見えない間に形成された一定の中国観をリセットする力を秘めていることだ。
人々の行動に数々の制限を課すパンデミック対策を事前の見通しより早く放棄することが12月に明らかになって以降、市場は当然ながら、これからどんな影響がもたらされるのかという難問に取り組んでいる。
数々の国内ルールが蒸発した――そして著しい効果がすぐに現れた――のに加え、中国に到着したときにPCR検査と隔離を受ける義務も撤廃されたことは、外国旅行を計画している中国人にとっては大きな障害が取り除かれたことになる。
中国人の外国旅行が大々的に再開されれば、出張が急増すると見られる(それに伴い、投資や各種の取引の可能性も高まる)。
これと並ぶ最もはっきりした効果になるのは、意に反して世捨て人のような生活を強いられていた巨大な中間層に鬱積していた観光需要が解き放たれることだろう。