皇居で3年ぶりに実施された新年一般参賀(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(つげ のり子:放送作家、皇室ライター)

 令和5年元日の払暁──。まだ日も昇らぬ時刻、黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう/天皇だけが着ることのできる衣装)に身を包んだ天皇陛下は、皇居・神嘉殿(しんかでん)の南庭の一角に、畳を敷いてその周りを屏風で囲った中にいらっしゃった。

 その中で陛下は、真冬の底冷えする寒さを感じつつも、四方の神々に向かって拝礼し、五穀豊穣(ごこくほうじょう)と国の安寧、そして国民の幸せを祈願されたのである。

 皇室の新年は、この「四方拝(しほうはい)」と呼ばれる宮中祭祀に、天皇陛下が臨まれることで始まってゆく。やがて差し込む初日の出は、皇祖神とされる天照大神が天の岩戸から姿を現し、まばゆいばかりの光を世にあまねく与えた、神話のエピソードを再現しているようだ。

 このようにして新年の幕を開けた皇室。1月2日には3年ぶりに新年一般参賀も実施され、宮殿・長和殿のベランダには上皇ご夫妻、天皇皇后両陛下と長女の愛子さま、秋篠宮ご夫妻や次女佳子さまら皇族が並び、皇居に集まった人々に手を振って応えられた。

 ここ数年はコロナ禍のために皇室の方々のお出ましの機会は、数えるほどに限られていた。今なお新型コロナが懸念されてはいるが、行動制限が緩和された今年は、昨年よりも国民の目に触れる機会が増えるのではないだろうか。

 そこで令和5年、動き出した皇室の注目すべきポイントと、課題について考えてみたい。

「SNSを活用する」という宮内庁の定まらぬ方針

 昨年12月23日、宮内庁は2023年4月に広報室を新設し、SNSの活用を視野に入れた皇室情報を発信していくと発表した。

 いよいよ皇室にもSNSの時代が訪れたのかとメディアは大々的に報じたが、それはあくまでも「SNSを視野に入れた広報体制の充実」であり、必ずしもSNSを始めると断言しているわけではない。

 かつて宮内庁報道室に勤務していた、皇室解説者の山下晋司氏は言う。

「新設される広報室では、まずホームページの改修を考えているようです。SNSは時代の趨勢を見れば近いうちにやらざるを得ないと思いますが、いつから、どのような方法で始めるかはまだ決まっておらず、これからの話です」