(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年12月6日付)

1942年11月30日、ガダルカナル島への補給目的でルンガ沖夜戦に出撃する旧日本軍の水雷船隊(写真:アフロ)

 世界の国のなかで戦略的な重要性が全くない国をノミネートしたいのであれば、ソロモン諸島は良い候補に聞こえるかもしれない。

 人口はおよそ70万人、南太平洋に浮かぶほぼ1000の島々から成るソロモン諸島は、大国政治から遠く離れているように思える。

 国家元首は英国の君主だが、国王が最後に訪問したのは40年前だ。中国は6000キロメートル以上離れており、オーストラリアはおよそ2000キロ離れている。

太平洋を支配する中国の野望

 これだけ離れた地理にもかかわらず、ソロモン諸島は次第に激しくなる中国と西側の戦略的ライバル関係の思わぬ火種になった。

 今年4月にソロモン諸島と中国が安全保障協定に調印すると、米ワシントンと豪キャンベラで警戒感が一気に強まった。

 ホワイトハウス高官のカート・キャンベル氏が飛行機に飛び乗り、ダメージの修復を図ろうとしたが、失敗に終わった。

 オーストラリアのペニー・ウォン外相は、スコット・モリソン首相が率いた当時のオーストラリア政府が、過失によって「第2次世界大戦以来最悪の太平洋における外交政策の失態」を犯したと主張している。

 ソロモン諸島に対するオーストラリアと米国の懸念は、太平洋における中国の野望への不安感に駆られたものだ。

 数十年に及ぶ急激な軍の拡大を経て、中国海軍は米海軍より多くの船舶を持つようになった。習近平国家主席の下で、中国はすでに南シナ海に軍事基地を構築した。

 中国とソロモン諸島の協定は主に国内の治安対策が対象だ。

 だが、米国とオーストラリアは、中国が南太平洋に海軍基地を設ける構えで、基地を受け入れる可能性が最も高いのがソロモン諸島だと恐れている。