(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年11月28日付)

バラク・オバマ元大統領が“don’t do stupid stuff”「愚かなことはするな」と言ったことはよく知られている(本当はもっと強い表現を使っていた)。
これは常に有効なアドバイスだ。今日の英国には特に良い助言になる。
英国政府が賢明な行動を取り始めることができたら、それは素晴らしいことだ。だが、過大な望みを抱いてはいけない。しかし、本当に愚かなことを止めるのは可能なはずだ。
ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)は、それ自体愚かなことだった。
ブレグジットについて詳しく知ったうえで、その愚かさに疑いをはさんだ人はほとんどいない。EU離脱により、英国は最も近い隣国にして最も重要な貿易相手国との間の壁を高くしてしまった。
英予算責任局(OBR)が11月に指摘したように、「最新のデータは、ブレグジットが英国の貿易に多大なる悪影響を及ぼしていることを示している」。
全体の貿易量も、英国企業とEU企業との取引関係の件数も減っている。
OBRはまた、至極もっともなことに、「ブレグジットの結果、長期的には、英国の貿易結合度はEUに残留していた場合に比べ15ポイント低下する」と想定している。
その一方で、中国や米国との通商関係をもっと密接にするという希望が雲散霧消すると、「グローバル・ブリテン」も消え失せた。
EU離脱の愚と関係修復の難しさ
ブレグジットは愚かなことだったが、EUとの関係を緊密なものに戻す簡単な方法があると考えることもまた愚かだ。
まず、EUへの再加盟は考えられない。
その理由は英国内の政治的内戦が悪化するということだけではない。EU諸国は賢明だから、英国をEUの熱心なメンバーとして、そして今後そうなりそうな国として信頼することができないからだ。
EU諸国から見れば、離脱後の英国がまごついている様子は、離脱した時に待っている危険を教えてくれる有用な先例だ。