中国で広がる白紙デモが世界にも飛び火(写真は東京、11月30日、写真:ロイター/アフロ)

「ゼロコロナ」政策って何だったのか

 新型コロナウイルスの感染を厳しい行動制限で抑え込もうとする中国・習近平国家主席の「ゼロコロナ」政策への抗議活動が広がり、対応に苦慮している。

 若者たちが白紙のカードを掲げて抗議の意思を示すことへの共感が一般市民の間で広がる中、デモの再発を阻止しようと、中央・地方政府が各地で警備態勢を強化している。

 習近平氏は、警察・司法を統括する共産党中央政法委員会トップの陳文清*1氏(62)に「敵対勢力の取り締まり」を指示した。

*1=陳文清氏は習近平氏が総書記(国家主席)就任した2012年から中央規律検査委員会副書記として習近平氏の「反腐敗闘争」を支え、2016年から国家安全相を務めた。2022年11月の党大会後にトップ24人の政治局員に昇格した。まさに習近平氏にとっての「敵対勢力」を鎮圧・粉砕する懐刀だ。

 抗議デモの背後に「外部からの敵対勢力」がいるとの中国共産党のいつもながらの思考回路なのだろうが、今回は間違っていない。

「ゼロコロナ」政策に反旗を翻した若者たちを唆(そそのか)したのはサッカーの「ワールドカップ」だったからだ。

 そう指摘するのは、中国のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)に精通している、米ブルームバーグのオピニオン・コラムニストのロウ・デ・ウェイ氏だ。

 11月10日にカタールで開幕した国際サッカー連盟(FIFA)の「ワールドカップ」。

 2021年の夏季東京五輪、2022年の冬季北京五輪以後、パンデミックの中で開かれる初の大規模な国際スポーツ大会だ。

 東京、北京ともに極端な観衆制限(ある時は完全な観衆ゼロ)で行われ、出場選手の行動範囲も厳しく規制された。

 それ以来のスポーツの祭典だ。しかも中東での初めてのワールドカップだ。

 パンデミックはまだ収まったわけではない。にもかかわらず、ワールドカップは新型コロナ発生以前の時と全く同じような環境下で行われている。

 全世界から予選トーナメントを勝ち抜いた強豪チームが集まった。熱戦の模様は中国全土でテレビ中継されている。

 信じられないかもしれないが、今回出場はできなかった中国のサッカー人口は「2616万6335人」(FIFA公式サイト)。世界最大だ。