(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年11月25日付)

SNSは権力に対してのチェック機能がある半面、フェイクニュースの温床となりやすい

 今となっては古風な考えに思えるが、米国の文化評論家ニール・ポストマンは1985年、我々は皆、「死に至るまで娯楽に興じる」と警鐘を鳴らす本を著した。

(題名は『Amusing Ourselves to Death=邦訳:愉しみながら死んでいく―思考停止をもたらすテレビの恐怖』)

 それによると、「しゃべるヘアスタイル見本」の登場でテレビのニュースは芸能娯楽番組に変質し、公の場での議論が安っぽくなった。テレビは情報の新しい「品種」を作り出した。

 これは偽情報と呼ぶ方が適切で、「見当違いで無関係で断片的か皮相的な情報」で知識の価値を貶めた。この種の情報からは意味のある内容が排除されている。

 2003年にこの世を去ったポストマンがまだ存命だったら、人が娯楽に興じる独創的な形態をはるかに多く備えたソーシャルメディアについてどう考えたか、想像するだけで震えがくる。

 インターネットの登場は、公の場での議論を深める非常に大きな可能性に道を開いたかもしれない。

 だが、ひょっとしたら我々の時代の精神を的確に捉えていたのは、イーロン・マスク氏の先日のツイートかもしれない。

「最も面白い結果こそが最も実現する可能性が高い」という言葉だ。

新オーナーの支配下のツイッター

 確かに米ツイッターの新オーナーはツイートした通りの行動を取っている。1億1900万人を数えるマスク氏のフォロワーは、同氏のタイムラインから目が離せない。

 宇宙開発企業スペースXのロケットが発射される光景、ツイッターのサービスのアップデート情報、きわどいジョーク、陰険な個人的論評などをまき散らすマスク氏は、今や自分がコントロールする媒体の支配者だ。

 社員を大量解雇した後にもかかわらず、デイリー・アクティブユーザー数は記録的な高水準に達したと胸を張っている。

 コンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視・削除)は、今ではマスク氏の気まぐれを反映したり、没入型劇場に変えられたりしている。