国民党の台湾統一地方選キャンペーンポスター。台北市長選に出馬する蒋萬安氏は蒋介石の曾孫にあたる(2022年11月14日、写真:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 11月26日に、台湾にとって重要な統一地方選挙「九合一」(9つの選挙を同時に行うの意)選挙の投開票が行われる。

 いずれの選挙も、国政に関わる政治家を選ぶ場ではなく、本来なら住民に身近な暮らしの問題を託す地元のリーダーを選ぶ選挙なのだが、習近平の3期目の総書記続投が決まり、「中国の脅威」をどのように台湾有権者が考えているかのリトマス試験紙的役割も果たす意味で注目されている。

 また与党に対する満足度が投票結果に表れるとして、現政権、つまり蔡英文執政の成績表的な意味合いも持つ。この選挙で民進党が良い結果を収めると、2024年の総統選挙で、習近平が敵視する民進党政権が勝つ可能性がそれだけ高まるということだ。

 民進党は92年コンセンサス(「一つの中国」原則の合意)を認めず、中国側から「台独(台湾独立)を画策している」と批判されている政党。国民党は党是として中国共産党と和平協議を行うことを掲げている平和統一派。そして、台北市長の柯文哲が2019年に創設した新党の民衆党は、米国とも中国ともビジネス上うまくやっていきたい友中親米を謳う日和見路線。

 そういう意味では、台湾の安全保障にも直結する重要な選挙だ。あと2日に迫る九合一選挙の注目点を解説したい。

2018年の九合一選挙では国民党が圧勝

 九合一は4年に一度行われる台湾の統一地方選挙である。6直轄市(台北、新北、桃園 台中、台南、高雄)市長、直轄市議員、県市長、県市議員、郷鎮首長(日本の町村長に相当)、郷鎮市民代表(日本の町村議員に相当)、里村長(日本の町長に相当)、山地先住民区長、先住民区民代表を選ぶ9つの選挙が行われる。