(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年11月19・20日付)

独裁者は思考回路が似てくるのかもしれない

「ツイッターの買収は万能アプリ『X』を作るための促進剤だ」

 イーロン・マスクは10月4日、ツイッター上でこう説明した。

 それから4週間後、作家のスティーブン・キングがツイッターから認証を受けるために月間20ドル払うことに抗議した後、マスクは退却していた。

 サンフランシスコの本社内の「ウォールーム(作戦指令室)」から「8ドルではどうか」とツイートした。ツイッターはその後、有料サービスの認証を一時停止した。

 時折、マスクはますます、幸いにも血塗られていないバージョンのウラジミール・プーチンに似てくる。

 440億ドルという馬鹿げた値段でのツイッター買収は、独裁者が獲物を懲らしめようとした、ウクライナに対するプーチンの敵対的買収提案を思わせる。

 だが、マスクが自分の会社を破壊しているのに対し、プーチンの軍隊は新たに併合したヘルソンから撤退した。

 ここは「永遠に」ロシアであるはずだった場所だ。

 今の世界で支配的な2つの組織形態は、事実上同じものだ。ワンマン独裁国家とワンマン独裁企業だ。

 どちらも同じ弱点を抱えている。過度な称賛を浴びた孤独な指導者の気質がそれだ。

時代遅れだったワンマンバンドの復権

 ワンマンバンドはとうの昔に流行遅れになっていた。

 中国とロシアは、孤高の支配者だった毛沢東とヨシフ・スターリンが何百万もの国民を殺した後、数十年間にわたって集団的な指導体制を敷いた。

 ビジネスの世界では10年前、世界で最も価値が高い企業上位10社のうち、創業者がまだ経営している企業は一社もなかった。

 だが、その頃には、プーチン、習近平、マーク・ザッカーバーグのメタ(旧フェイスブック)、マスクのテスラ、ジェフ・ベゾスのアマゾン・ドット・コムがすでに勢力を伸ばし始めていた。

 そこへムハンマド・ビンサルマンがサウジアラビアの単独トップとなり、世界第2の時価総額を誇る企業サウジアラムコの事実上の支配者になった。

 同じく親から財産を受け継いだドナルド・トランプは、米国を家族経営の不動産会社のように運営しようとした。