大阪府の吉村洋文知事(写真右)も大阪・関西万博での「空飛ぶ車」実現へ意欲を見せる(写真:つのだよしお/アフロ)

大阪府は9月7日に、2025年に開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)で「空飛ぶ車」を実用化すべく、来年23年2月にも大阪城公園で有人の実証飛行をすると発表した。実現すれば、我が国で初めての自動車が車を飛ぶことになる。だが、その準備は整っているのか。

(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)

飛行距離は100〜150kmほど

 実証飛行では、米リフトエアクラフト社製の「ヘクサ」(全長4.5メートル、高さ2.4メートル、1人乗り)の機体を使う。巡航速度は時速約100キロメートルだ。

 空飛ぶ車は日本のベンチャー企業も参入を狙う。スカイドライブ(愛知県豊田市)もその1社で、大阪・関西万博における空飛ぶクルマの飛行実現に向け、すでに大阪府、大阪市と連携協定を結んでいる。同社は将来的に一般の効率的な移動手段や遊覧飛行、それに救急医療での活用も検討しているという。

 空飛ぶ車には2つのタイプがある。ひとつは「マルチコプター型」で、ドローンのように複数のローターを回転させて、垂直離着陸や水平飛行をするタイプだ。

 もうひとつは「固定翼付き型」で、ローターに固定翼を付け加えたもの。こちらは水平飛行時に翼を利用できるため、マルチコプター型より長距離の移動が可能である。固定翼付き型は、さらに離着陸時と水平時にプロペラの向きだけを変える「ティルトローダー型」と、プロペラが付いている固定翼ごと傾ける「ティルトウイング型」、離着陸と水平時にそれぞれ別の機構を使用する「分離型」に細分化できる。

空飛ぶ車には様々なタイプがある。写真はスウェーデンのJetsonが開発しているeVTOL機「Jetson One」(提供:Jetson/Cover Images/Newscom/アフロ)

 それぞれの製造費用は、マルチコプター型が数千万円程度に対し、固定翼付き型では数億円かかるとされる。いずれにしても電動であるため、現在のリチウムイオン電池で1回の充電で飛行できるのは30分程度となり、飛行距離に置き換えると、100キロメートルから150キロメートルほどにとどまる。長距離移動を可能にするためには、全固体電池の実用化などが必要になるとされている。

 スカイドライブが国土交通省の型式証明取得を目指し開発中の「SD-05」は、マルチコプター型で、「eVTOL」と呼ばれるタイプなので、今回はそれを前提に様々な角度から考察してみたい。