(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年11月7日付)

日本の夜の街を照らす大きなスクリーン式の看板は全く不要と言うのだが・・・

 東京の金融街で最も大きな書店のベストセラーコーナーだけで判断するなら、2022年後半の日本の街には革命の炎が燃え広がっているはずだ。

 書棚の一つは、ビジネスを礼賛し、世界の指導者たちを崇め、成功の7つのカギでトップに立てると請け負う書籍で埋まっている。

 危機の到来――年金の積み立て不足、人口減少、異常気象――を取り上げるものもあるが、やはり資本主義が解決策を提示してくれるという何事も恐れない信仰に基づいている。

 ところがその真向かいの棚にはカール・マルクスの著作の新訳やその解説書が並び、世界経済の推進装置にブレーキをかけなければいけないとあの世から訴えかけてくる。

 意気消沈している現代日本で大量消費されることを目指した魅力的な装丁で、マルクスこそ「脱経済成長」の哲学を説いたビジョナリーの元祖だと売り込んでいる。

資本主義vs脱成長至上主義

 グローバルな不安材料をマルクス主義の視点を介して論じる書籍が、日本で新たなうねりを引き起こしている。

「資本論」を解説するマンガもある。

 こぎれいな里山のキャンプ場を背景に登場人物が労働搾取について語り、脱成長至上主義に転向する可能性を秘めたサラリーマンの読者層の拡大を目指している。

 日本での昨今のマルクス主流化で先頭に立っているのが斎藤幸平氏だ。

 同氏は非常に好感の持てる哲学者で、壁一面に本が並んだ東京大学の研究室で、経済格差と切迫した環境破壊の危機から社会を守るには脱成長しかないと力説する。

 経済成長は私たちを幸せにしなかった。フラストレーションが蔓延している。コーヒーの容器を繰り返し使えるものに変えても私たちは救われない。

 斎藤氏は繰り返し使える器で飲み物を口にしながら、そう強調した。

 日本の一般大衆がこの主張に賛同するか否かはともかく――読者が多いことと、その主張が広く受け入れられていることを同じだと考える理由はない――斎藤氏による問題のとらえ方に非常に多くの人が好奇心をそそられていることは間違いない。