情熱や強固な意志をあまり感じさせない岸田首相の話し方(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

変革が急務の時代。今まで頼りにしていた「優等生」は前例踏襲と体裁にこだわり、問題の本質や核心に迫れない。一方、「優等生」然とした岸田文雄首相が打ち出す「リスキリング」は流行語大賞の候補にもなった。いわゆる「人への投資」を掲げる岸田政権の目玉政策は、日本経済の再生に寄与するのか。スキルも大事だが、本当に必要なのは、旧弊を打破するために「脱・優等生」を進めることではないのか。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

「人への投資」の成果が出るまで岸田政権は続くのか

 11月4日、年末恒例の『現代用語の基礎知識選 2022ユーキャン新語・流行語大賞』の候補30語が発表されました。「オミクロン株」「宗教2世」「村神様」など「今年の10大ニュース」にも入りそうな事柄にまつわる言葉が目立ちました。その中で私は「リスキリング」がノミネートされていることに注目しました。
 
「リスキリング」とは、主に社会人の「学び直し」という意味です。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれる中、ITやデジタルの技術を集中的に身につけて、企業内でイノベーションを起こしたり、成長分野に転職したりしやすくするために求められるようになりました。

 リスキリングの推進は岸田政権が掲げる経済政策「新しい資本主義」の柱の一つである「人への投資」の具体的施策でもあります。

「投資」対象はDX関連が中心になるわけですが、成長分野への「選択と集中」は確かに必要です。スキルを身に着けることは第1段階で、そのスキルを基に新しい商品やサービスを生むことが第2段階です。そして、それらが、また新しいビジネスを生み出して、経済を活性化し、日本の経済社会が再生することがゴールです。

 そこまでたどり着くにはどれくらいの時間が必要かわかりませんが、少なくとも数年はかかるのではないでしょうか。

 それを打ち出した岸田首相ですが、「人への投資」の成果を政権の実績として報告するどころか、経過さえも見守ることができるのかどうか危うくなってきています。