(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年11月1日付)

ブラジルの大統領選で僅差で敗れた現職ボルソナロ氏(11月1日撮影、写真:AP/アフロ)

 ブラジルの大統領選挙でのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ氏(77)の勝利は、勝ち誇った華々しいカムバックとはならず、緊迫に満ちた遅い歩みだった。

 国の統治は間違いなく、それ以上に困難なものになる。

 決選投票が行われた10月31日夜、票の集計が3時間かけて進められると、ルラ氏が2002年と2006年の選挙で謳歌したような地滑り的勝利の再現がないことはすぐに明らかになった。

 極右の現職ジャイル・ボルソナロ大統領(67)を下した今回の勝利は、苦労してひねり出したものだ。最後に勝敗を分けたのは、わずか1.8%の差だった。

 ボルソナロ氏とその支持者らは選挙戦終盤の数日で失態を重ね、ある仲間がサンパウロの街中で拳銃を振りかざしながら黒人男性を追いかける様子が動画で撮影されたりした。

 こうした失態がなかったら、右派ナショナリストの勢力が勝利を収めていたかもしれない。

流れは社会的保守主義と小さな政府

 今回の結果は、「熱帯のトランプ」の異名をとるボルソナロ氏の支配下の4年間だけでなく、過去20年間にわたってブラジルがいかに様変わりしたかを思い出させてくれる。

 キリスト教福音派教会の驚異的な台頭が一つの要素になっている。今やブラジル人のほぼ3人に1人が福音派の信者だ。

 もう一つは、ブラジルの国内総生産(GDP)の3割近くを占める農業のロビー活動の影響力だ。

 どちらも社会的保守主義と小さな政府を尊ぶ資本主義の原動力になっている。いずれもルラ政権の下で消えることはない。