トラックと列車が爆発し炎上するクリミア大橋(10月6日、撮影:ロイター/アフロ)

 都市へルソンを含むウクライナ南部の戦いは、ウクライナ軍が反撃に転じ、徐々に地域を奪還している状態だ。

 この戦闘は、へルソンで一区切りではなく、クリミア半島(今後、半島と記述)まで続く戦いとなる。このことから、へルソンから半島全域に至る一連の戦いとみて考察する。

ウクライナ南部での攻防(10月25日現在)

薄い青色:ウクライナ軍の奪還地域、ピンク色:ロシア軍占領地域、出典:Critical Threats

(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイト=https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72433でご覧ください)

 ウクライナ南部のへルソンから半島での戦いを分析するにあたっては、地理的な特性を分析する必要がある。

 海に囲まれた半島は、陸続きの北部のキーウや東部のハルキウとは戦い方が異なる。

 守る側は、陸側の半島の付け根から攻撃されれば、「袋の鼠」状態となり、逃げ場を失うことになる。戦闘支援は、空と海からにならざるを得ない。

ウクライナ南部の要図

出典:グーグル・アースに基づいて筆者が作成

 南部の陸上作戦は、地形(地表面の特性)の影響を大きく受ける。この地域には、大河川、半島の付け根には湖沼があって、それらが攻勢作戦を阻害する。

 一方、その間に挟まれた平野部は、戦車などの機動が容易な平坦な地形だ。今後、ウクライナ軍がへルソンを奪還してドニエプル川を渡河すれば、その後、両軍は、半島に至る戦闘と半島内の戦闘になる。

 この地域の戦いは、両国にとって戦争目的を達成するかどうかの戦いであり、軍事戦略的にも重大な価値があるものだ。

 陸海空軍、ミサイル攻撃、大量破壊兵器まで投入して戦うほどの決戦の場になろう。

 それゆえ、これまで見たことがないような戦闘が生起することになる可能性がある。

 この戦いを予測するにあたって、

①南部地域の地形的特性から軍部隊の攻防の流れを読む

②3つの地域の戦いの予想

③南部で戦うロシア軍の実情

④ウクライナ軍の戦い方

⑤南部の戦いはこれまで見たことがない戦いになる、の順に考察する。