(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年10月18日付)

記者会見する英国のリズ・トラス首相(10月14日ロンドンで、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

「トラソノミクス」が瓦礫の山と化した。

 9月23日の無謀な「ミニ」予算で低税率・高成長経済に向けた急進的な計画を打ち出して以来、英国のリズ・トラス首相がもたらしたものは金融市場のカオスとUターンだけだった。

 10月17日、政策パッケージの残骸の大半を撤回することで英国債市場を落ち着かせることを目指し、ジェレミー・ハント新財務相が首相の政策に大ナタを振るった。

 トラス氏とクワシ・クワーテング前財務相の減税計画は今や、3分の1程度しか残っていない。

 目玉政策として両氏が掲げた光熱費支援策さえ縮小される。トラス氏の経済プロジェクトは死んだ。政策綱領が消滅した今、トラス氏も消え去るのは時間の問題だ。

トラス政権下で瓦解した経済的信用

 ハント氏が中期財政計画の重要な詳細の発表を当初予定の10月31日から前倒ししなければならなかったことは、英国の経済的信用がトラス氏の下でいかに大きく、いかに急速に落ちたかを物語っている。

 金融市場は、英国の財政の計算が合う確かな証拠を必要としていた。ハント氏は投資家に対し、政府が再び財政責任にコミットするという重大なメッセージを送った。

 投資家が英予算責任局(OBR)による最終評価を待つ間、この言葉は金融市場に一定の安定をもたらすことに寄与するはずだ。

 法人税の減税計画を撤回した14日の方向転換に加え、残っていたトラス氏の税制措置を覆すことで、英国が借り入れなければならない資金の額が大幅に減る。

 家庭と企業向けのエネルギー価格保証の構造を見直す計画も賢明だ。元の計画はコストが高く、対象の絞り込みがお粗末だった。