(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年10月13日付)

ドル高を米国の責任だとして無策を貫けばそのツケを払わされるのは無策の国の国民だ

 フランスの政治指導者がかつて米ドルを米国の「法外な特権」と呼んだことがあった。

 今日の世界では、もっと率直な表現が使われるかもしれない。

「苦痛の媒介者」なんて、どうだろうか。あるいは緑色の紙幣から「グリーンモンスター」はどうか。

 表現の仕方はともかく、ドル高の犠牲者は犯人に心当たりがある。

 そう、米連邦準備理事会(FRB)だ。欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表さえもが、ここに加わった。

 ボレル氏は先日、2008年の世界金融危機後にドイツが押しつけたルールのせいでユーロ危機が引き起こされたのと同じパターンで、FRBは景気後退を輸出していると警告した。

 世界の大部分が今、ギリシャになる恐れがあるというのだ。

世界的な経済縮小のエンジン

 そのような名指しの批判は大抵、FRBにしてみれば不当だ。

 確かにFRBは、今回のインフレは一時的だと切り捨てる「過渡的派」の主張に長くしがみつきすぎたため、中央銀行としての信頼を回復しようと大急ぎで金融を引き締めている。

 だが、これはルールに従っているまでのことだ。

 そもそも米国内の完全雇用を低インフレ下で達成することだけでも難しい。

 外国の人々の幸せまでFRBのマンデート(使命)に盛り込めば、業務が複雑になりすぎて手も足も出なくなってしまう。

 それでもやはり、FRBはグローバルな経済縮小のエンジンだ。通貨がらみの苦痛は目下、最も急速に成長している米国の輸出品目なのだ。

 大きな未知数は、その後始末を誰が担うか、だ。