小金井市長の行動は理解しがたい(写真は東京都庁、小金井市は写真の奥の方角にある)

 9月29日、東京都小金井市で奇妙な「専決処分」が行われました。

 市議会で継続審議となっていた市立保育園「廃園」のための市条例改正案を、西岡真一郎市長は議決を経ずにトップダウンで「専決」してしまったのです。

 市内からは廃園反対派はもとより、廃園に賛成の市議などからも「議会を無視する軽挙妄動」「専決処分の要件を満たさないのでは?」といった非難の声が上がりました。

 小金井市議会では10月7日の本会議で「専決処分」の承認投票が行われ、20対2の圧倒的反対多数で「専決処分」は不承認となりました。

 すると西岡市長側は、この「専決処分不承認」という事態に対して「地方自治法179条4項に基づき」「混乱に政治的責任を感じ」市長職の「退職願」を提出してきました。

 小金井市議会はこれを承認して10月14日付の辞職(https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/hoiku/61554/)が決まりました。

 このような経緯を見ると、市長は選挙で市民に信を問うという展開かと思われますが、なぜか「西岡市長」は「次回市長選には出馬しない意向」と報じられています。

 ここまでの経緯だけではわけが分かりません。

 ところがさらに10月12日、すでに辞職が決まっている西岡市長が「議会が不承認でも改正条例は有効」と主張する特異な文書(https://www.asahi.com/articles/photo/AS20221012002079.html?oai=ASQBD5KJHQBDUTIL00Y&ref=yahoo)を配布し始めます。

 そこに開陳されているのは、またしても先ほどの地方自治法179条4項。

「条例の制定が(中略)否決されたときは、普通地方公共団体の長は、速やかに、当該措置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告せねばならない」

「議会の承認を得られなかったとしても処分の効力に影響はないとされている(行実昭26.8.15自行発217号)」を引っ張り出します。

「必要な措置」は「市長辞職」という、かなり飛躍のあるストーリーを展開、居直る主張を展開しているというものでした。

 江戸時代、家老が主君を諫めるのに、切腹の所作で腹に刀を突き刺したまま、意見を無理やり通す「詰め腹を切る」所作というのがありました。

 それと似たようなものを感じさせるアクロバティックな手口であり、民主主義的な手続きを正確に理解しない、首長職など政治家の質的劣化を感じざる得ません。