台湾・新竹サイエンスパークにあるTSMC本社(写真:AP/アフロ)

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

「戦争なんか起こるはずがない」と高を括っていたら、北京オリンピック閉幕直後の2022年2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始してしまった。この戦争は7カ月以上経過した現在もまだ続いており、終息する見通しが立っていない。

 そして今度は、中国が台湾に軍事侵攻する「台湾有事」が現実味を帯びてきている。ロシアの軍事侵攻が本当に起きてしまった今、もはや「台湾有事などが起こるはずがない」と目を背けることはできない。

 特に、台湾には、世界最先端の微細加工技術によってロジック半導体を生産しているファンドリーのTSMCがある。もし台湾有事が勃発し、中国が台湾を占領してしまったら、TSMCはどうなるのだろうか? 一方、対中政策を厳格化している米国は、どのような対応策を取るのだろうか?

 そして、世界の半導体の勢力図はどう変化するのか? さらに、日本にはどのような影響が及ぶのか? 本稿では、台湾有事の行方と世界の半導体情勢について論じたい。

トリガーを引いたのはペロシ米下院議長の訪台

 事の発端は2022年8月3日に、ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問し、蔡英文台湾総統と会談を行ったことにあるようだ。