(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年9月30日付)

ユーロとポンドの下落は起こるべくして起きた

 今春、ロシアによるウクライナ侵攻の直後、米ワシントンに本部を構える国際金融協会(IIF)が大胆で一風変わった予想を打ち出した。

 ユーロ圏の経常収支が赤字転落に向かっているため、通貨ユーロが当時の1ユーロ=1.11ドルの水準から劇的に下落すると予想したのだ。

 この見方に同意する投資家は多くなかった。

 米証券先物取引委員会(CFTC)のデータは、市場では当時、投機ポジションがネットで「ロング(買い持ち)」であること――言い換えると、投資家がユーロ上昇に賭けていること――を示していた。

 欧州中央銀行(ECB)が金利を引き上げていたためだ。

ユーロとポンドの急落を見事当てたIIF

 だが、9月下旬には相場が1ユーロ=0.98ドルまで下げ、輸入エネルギー費の急騰と工業輸出の減少を受け、欧州の伝統的な貿易黒字が実際に経常赤字に転落していた。

 英ポンドに関するIIFの予想も同じくらい正確だった。

 IIFチーフエコノミストのロビン・ブルックス氏はこの数カ月、英国の経常赤字が近年見られた水準の国内総生産(GDP)比3%から同8%超に静かに拡大したことを市場が無視しているため、当時の1ポンド=1.35ドルの相場水準ではポンドが過大評価されているように見えると警告していた。

 9月下旬、英政府が予想外の減税計画を発表すると、ポンドは確かに急落し、米ドルとのパリティ(等価)に迫った。

「(ユーロとポンドの)こうした動きは不合理でもなければオーバーシュートでもない」とブルックス氏は主張する。

「両通貨の適正価値が、エネルギー費用の上昇とはるかに弱い貿易収支を反映するようシフトした」

 実際、ブルックス氏は9月末時点の相場でさえ「ユーロはまだ10%、ポンドは20%過大評価されている」と見ている。衝撃的だ。