(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年9月28日付)

改革とは己を知ることが第一歩である。それなしに大胆な施策を行えば失敗の危険性が高まる

 英国の作家イーヴリン・ウォーは20世紀初めを舞台にした小説『Brideshead Revisited(邦訳「回想のブライズヘッド」、岩波文庫)』の中ほどに、明らかに米国人を小馬鹿にする目的でクルーズ船のワンシーンを押し込んでいる。

「スタイヴサント・オグランダー上院議員」なる人物が登場する。飲み物には必ず氷を入れる。友情と捨て鉢な愛想の良さを誰も見分けられない。

 英国の文豪のなかでも特に気難しいウォーがもっと優れた作品を書いたことは疑いないが、この一節は反米主義が保守党的なものだった時代を垣間見せてくれる。

反米主義が英保守党らしかった時代

 そして、その反米主義はそれなりに役立った。

 少なくとも当時の英国のエスタブリッシュメント(支配階層)は、米国が異国であることをはっきり認識していた。

 中規模の島国は、天然資源に恵まれた大陸規模の市場に統治のアイデアを期待することなどできない、ということだ。

 もし反米主義が良くないというのであれば、その反対の主義が何をしたか振り返ってみるといいだろう。

 英国が今トラブルに陥っているのは、エリートたちが自分の国と混同するほどに米国に夢中になっているからだ。

 英国は世界の準備通貨を発行していない。需要がほとんど無限に存在する国債を発行しているわけでもない。

 米国の共和党が時々やるように、未来の議員たちが歳出を切り詰めてくれるという直感に基づいて減税することはできない。

 レーガン主義は良いアイデアだった。米ドル抜きのレーガン主義はそうではない。

 ただ、もし英国のリズ・トラス新首相に何らかの腹案があるとするなら、それは後者のレーガン主義だ。