生産関係者の地道な努力によって食卓を飾る野菜は進化を続けている(写真:アフロ)

東京の大手町は過去100年で3℃も気温が上がったという。要因の内訳は、都市化が2℃で地球温暖化が1℃である。では東京での野菜作りはどうなったか。以前、伝統的な「江戸東京野菜」である練馬大根の話(「気温上昇も味方につけた練馬大根だが、社会の変化で静かに主役から退いた」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71611)を書いたが、今回は東京都農林総合研究センターの野口貴主任研究員にお話を伺った。

(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

農家のニーズに応える農業試験場

 野口氏らが働く東京都農林総合研究センターでは、都内の農家のための農業試験をしている。対象とする作物はトマト、キャベツ、ダイコン、ホウレンソウなど、東京の食卓でお馴染みのものだ。

 種苗メーカーは毎年次々に新しい種を開発し販売する。それを東京で実際に育ててみて、きちんと育つかどうか、種をまくタイミングはいつにしたらよいか、といったことを調べ、都内の農業関係者に情報提供するのが仕事だ。

 種は交雑した一代雑種(F1種)がほとんどだ。食べておいしく、病害虫や高低温に強く、高値で売れて、育てやすいよう、品種は年々改良されている。また、農家が病害虫や暑さ寒さなどで困っていれば、その相談を受けて、対策の仕方を提案する。

 JR立川駅のとなりの西立川駅(東京都立川市)近くにあるセンターの敷地面積は15ヘクタール、圃場は8ヘクタールと広大だ。ガラスとビニールでできたハウスが一面に並んでいる。

 農業試験場は、農家のニーズに応える日々の業務で忙しい。100年かけて気温が上がった、下がったということを特に意識することはないそうだ。