(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年9月23日付)

FRBは米国の中央銀行であって世界の中央銀行ではない――ジェローム・パウエル議長はそう思っているに違いない。ドルはたまたま基軸通貨であるにすぎないとも(9月23日、写真:ロイター/アフロ)

 2021年3月、米連邦準備理事会(FRB)がまだ月間1200億ドル相当の証券を買い入れていた時に、南米ブラジルの中央銀行は政策金利を0.75%引き上げた。

 その背景には、世界的なコモディティー(商品)価格急騰がインフレを引き起こすとの懸念があった。

 FRBがやがて物価圧力は一時的なものでは到底済まないことに気づき、ようやくフェデラルファンド(FF)レートの誘導目標をゼロ近辺から引き上げるまでに、さらに1年の時間がかかった。

 その頃には、ブラジルは政策金利を11.75%まで引き上げていた。

近隣窮乏化政策とリバース通貨戦争

 時間はブラジルの金融システムの番人が正しかったことを証明した。

 だが、FRBがインフレ抑止に動くのが遅かったために、ブラジルは――それを言えば世界中のどの国も――無傷では済まない。

 9月21日に3回連続での0.75%の利上げに踏み切ったFRBは、まだ遅れを取り戻そうとしている。

 米国経済にとっては、これが最善の道筋なのかもしれないが、利上げの激しさは米ピーターソン国際経済研究所のモーリス・オブストフェルド氏が「近隣窮乏化」政策と呼ぶものを引き起こしている。

 FRBのミスの結果が米国から事実上輸出され、貿易相手国に負担を負わせているのだ。

 米国金利の上昇はドル高を招き、多くの場合ドル建てで取引されているコモディティー価格を上昇させることによって諸外国のインフレを悪化させている。

「リバース(逆)通貨戦争」が全面的に繰り広げられ、世界中の金融当局が今、標準的な0.25%刻みの利上げをかなぐり捨て、対ドルでの通貨安を食い止めるために0.5%や0.75%、スウェーデンとカナダの場合は1%もの大幅利上げに動いている。