日銀の黒田東彦総裁(2019年12月撮影。写真:ロイター/アフロ)

記者「自国の通貨を半減させて、評価された中央銀行総裁がいるんですか?」

黒田東彦総裁「半減させていません。日本の賃金上昇率は1%未満で、安定的・持続的なインフレ率2%目標も達成されていません。今後とも引き続き、緩和政策を続けていきます」

記者「国民がこれだけ苦しんでいるのに、行き過ぎた円安の責任を感じたことはないんですか?」

黒田総裁「ありません。欧米の物価上昇率は8~10%で、わが国は足元(8月)2.8%。そうした状況をよく考えてほしい」

 9月22日の金融政策決定会合終了後、15時半から行われた日本銀行の黒田東彦総裁の記者会見は、これまでになく緊迫したやりとりとなった。私は1時間6分に及んだ会見を、インターネット生中継で見たが、これが「お公家クラブ」と冷やかされる日銀記者クラブかと思うほど、記者たちも熱くなっていた。

FRBの利上げラッシュ

 特に、黒田総裁が、これまでの金融緩和と「ゼロ金利政策」の方針を変更しないばかりか、「必要によっては追加の緩和措置も考える」と発言した後、記者たちも遠慮仮借のない質問を浴びせるようになった。

 こうした日銀の黒田総裁と対照的な対応を見せたのが、アメリカのジェローム・パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長だった。日本時間の同日明け方、FOMC(米連邦公開市場委員会)で、0.75%の利上げを決めたのだ。3月に0.25%、5月に0.5%、6月に0.75%、7月に0.75%と、この半年で3%という、猛烈な利上げに走っている。

 パウエル議長は、険しい表情で、こう述べた。

「インフレ退治は、やり遂げるまでやり続けなければならないというメッセージは、現在でも変わっていない。金利の上昇や、経済成長の鈍化、労働市場の減速などは、どれも国民にとって痛みを伴う。だがそれらは、物価の安定を取り戻すのに失敗するほど大きな痛みではないのだ」