ミレニアムソウルヒルトンの入り口(筆者撮影)

「まだ公式的に決まったことは何もありません」

 2022年9月15日、ソウル中心部にある「ミレニアムソウルヒルトン」ホテルで従業員は困惑した様子でこう答えた。

 このところ韓国メディアは相次いで「年末までで営業を終了する」などと報じている。

 この日、ホテルのティーラウンジで会った50代の大企業役員は「ソウルの江北(カンボク=ソウルを東西に流れる漢江=ハンガン=の北)のランドマークだから残念だね」と、もう決まったかのように話をしていた。

ソウル五輪を控えて1983年に開業

 ミレニアムヒルトンホテルは韓国の超高度成長とその転落、再起を象徴するホテルでもあった。

 開業したのは1983年。アジア競技大会(1986年)、夏季オリンピック(1988年)を控えて海外からの来訪者が急増することを見越してできた5つ星ホテルだった。

 ホテルを建設したのは当時、韓国財閥の中でも特に急成長を遂げていた大宇(デウ)グループだった。

 創業者である金宇中(キム・ウジュン=1936年~2019年)会長(当時)はソウル駅の向かいに大型の大宇ビル(今のソウルスクエア)を建設したのに続き、そのすぐ裏手に大型高級ホテルを建設することを決めた。

 今もホテルを抜けて庭風の階段を下りてソウルスクエアまで降りていくことができる。

 設計責任者として金宇中氏が接触したのが米国で活躍中の建築家でイリノイ工科大学教授だったキム・ジョンソン(1935年生)氏だった。