送迎バスにまつわる事故をどう防ぐか(イメージ写真:アフロ)

静岡県牧之原市の認定こども園で、日中の5時間にわたって3歳の女子が送迎バスに取り残されたまま亡くなるという痛ましい事故が起きた。熱中症が原因とみられ、県警が業務上過失致死の疑いで捜査している。同様の事案は過去も起きているが、こうした悲劇を繰り返さないためには何が必要か。日本航空の元機長で同社の安全推進部調査役も務めた杉江弘氏は、ヒューマンエラー防止を目的とするチェックリストの採用義務化を提言する。

(杉江弘:航空評論家、元日本航空機長)

散歩で園児を放置したまま戻ってしまうことも

 昨年7月にも福岡県の保育園で9歳の男児が送迎バスに9時間も置き去りにされ、熱中症で死亡した。それを受けて国は翌8月に、運転手1人のほかに子どもに注意を払う職員の同乗や、乗降時の人数確認、職員間の情報共有を徹底するよう、自治体に通知していた。

 報道によると今回、複数の要因・ミスが重なった。

  • 正規の運転手が休日のため、急遽、理事長が代わりに送迎バスを運転した
  • 乗車時の人数確認は行ったが降車時には怠った
  • 園児たちが入園時に1人ずつ入園記録の機器をタッチすべきところ、職員が一括して処理した
  • 当該女児が欠席していることに気づいたのに親に連絡をとって確認しなかった

 国からの通知があったのに、なぜ事故を防げなかったのか不思議でならないと誰もが思うことだろう。

 驚くべきことに送迎バスに限らず、公園などに散歩に連れて行った際、その場に園児を放置したことに気づかず職員が園に戻る事案が2021年度に都内だけでも80件があったという(9月7日付の東京新聞社説などによる)。これは報告された数字なので、実際はもっと多いのかもしれない。これではまたいつ悲惨な事故が起きても不思議ではない。