(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年9月6日付)

9月3日にモスクワで行われたゴルバチョフ元大統領の葬儀(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ドナルド・トランプは米国を再び偉大にすると約束した。

 習近平のお気に入りのスローガンは、中華民族の「偉大な復興」を謳っている。

 ウラジーミル・プーチンはロシアの偉大さを取り戻すという、似たような切実な願望に駆られている。

 だが、偉大な国とは、どのように定義するのか。プーチンと8月末に死去したミハイル・ゴルバチョフはこれについて異なる考えを抱いていた。

 プーチンにとっては、国家の偉大さは領土と軍事力、そして近隣諸国を脅したり従属させたりする能力によって定義される。

 ロシア大統領は、世界の列強の一角をなすことは自国の権利だと考えている。

 プーチンの考えでは、ロシアはウクライナが独立した時に「強奪」され、国力と偉大さを再構築するカギは失われた領土を取り返すことだ。

 ウクライナを侵攻する悲劇的な決断は、この強迫観念の集大成だった。

ゴルバチョフが振り返った屈辱

 ゴルバチョフにとっては、国家の偉大さはむしろ、一般市民の尊厳によって定義された。

 経済史家のダニエル・ヤーギンとの2001年のインタビューでは、ソ連が市民に生活必需品を与えられないことを引き合いに出した。

「宇宙に乗り入れ、(人工衛星)スプートニクを打ち上げ、あれほどの防衛システムを築く国を想像してみてほしい」

「それなのに、歯磨き粉がなく、粉石けんがなく、基本的な生活必需品がない。そのような政府で仕事をすることは信じがたく、屈辱的だった」

 ロシアの一般市民がもはや、そのような窮乏に耐えなくてもいいという事実は、ためらいがちだったとはいえ、ゴルバチョフの経済改革に負うところが大きい。