バイデン政権が成立させたインフレ抑制法には2032年までを期限とするEV税額控除制度が盛り込まれている(写真:AP/アフロ)

(水野 亮:米Teruko Weinberg エグゼクティブリサーチャー)

ホンダ、トヨタが相次ぎ大型投資を発表

 米国で電動自動車(EV)向けの電池を生産するため大型投資を決める動きが相次いでいる。

 ホンダは8月29日、韓国LGとの合弁により米国内に44億ドルを投資してEV向けバッテリー工場を建設すると発表。その2日後の8月31日、今度はトヨタ自動車が日本と米国で電池の増産に最大7300億円を投資すると発表した。米国向けの投資額は3250億円だという。

 この少し前には独フォルクスワーゲンと独メルセデスがカナダ政府との間でEVおよびバッテリー生産にかかる協力関係を強化する内容の覚書に署名したばかり。覚書にはEV用鉱物資源の供給やサプライチェーンの協力といった内容が含まれている。

 米国では各メーカーがEV生産に乗り出している。環境重視のバイデン政権が目指す、2050年までのゼロエミッション目標に加えて、中国が支配する生産サプライチェーンの変更を迫る政策に各社が対応を始めた形だ。

 ここへきて米国ではEVの売れ行きが好調である。

 トヨタ「プリウス」のようなハイブリッド車まで入れると、米市場に投入されているモデルの数は100近くに達している。ガソリン車販売の不振もあり、特に伸びているのが電気のみで走るEVだ。なかでもテスラの好調が目立つ。22年第2四半期の販売台数はどのモデルも前年同期比で増加しており、特に「モデル3」は同104.7%増と飛躍的な伸びを記録している。