(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年8月29日付)

ドルに対する信頼はすでに失われているはずだが・・・

 この8月、ドル相場がほぼ20年ぶりの水準まで高騰すると、アナリストらは昔からある「TINA(There is no alternative=他の選択肢はない=の頭文字)」論を持ち出して、偉大なドルが今後も上昇すると予想した。

 20年前に起きた出来事は、ドルは一段高よりもピークアウトに近いことを示唆している。

 米国株がドットコムバブル崩壊で下げる傍ら、ドルはなお上昇し続け、その後、2002年に始まり6年間続く下落局面に入った。

 似たような転換点が近づいているのかもしれない。そして今回、ドル安局面はさらに長く続く可能性がある。

長期トレンドを超えるドル高

 インフレを調整しても調整しなくても、主要通貨に対するドルの価値は現在、長期トレンドを20%上回っており、2001年に達した高値を超えている。

 1970年代以降の相場サイクルでは、典型的なドル上昇局面は約7年続いた。現在の上げ相場は11年目に入っている。

 もっと言えば、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の不均衡はドルにとって悪い前兆だ。

 経常収支の赤字が執拗に国内総生産(GDP)比5%を超える時、それは経済的なトラブルの到来を示す確かなシグナルだ。

 この点は、こうした大幅赤字が珍しく、スペイン、ポルトガル、アイルランドといった危機に陥りやすい国に集中している先進国世界には特に当てはまる。

 米国の経常赤字は現在、1960年以降1度しか突破したことがないこの5%の節目に近づいている。

 前回突破したのは、2001年のドットコムバブル崩壊後のドル安局面だった。