© 2021 Swan Song Film LLC
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 きれいなもの、かわいいもの、美しいもの。女の子が好きであろうものを男の子が求めるとおかしいとされてきた。そんな時代も変わりつつある。

 ジェンダーレスな魅力の人気俳優に取材した際、「ルポールのドラァグレース」を見ながら、時には泣いてしまうこともあると聞き、彼の決して楽ではなかったろう半生が頭をよぎった。

「ルポールのドラァグレース」は「アメリカズ・ネクスト・ドラァグ・スーパースター」の称号と賞金10万ドルを目指し、クイーンたちが様々な課題に挑戦する勝ち抜きコンテストである。アメリカでは今年1月にシーズン14が放送された人気番組で、日本でもNetflixで視聴できる。

 ドラァグクイーンは女装する男性で、出場者のほとんどはゲイである。多くは子ども時代がトラウマになっている。周りの男の子と違う自分に気づき、必死で隠そうとするも、いじめに遭い、親にも相談できず、悶々としていた幼い頃。他人と違うことは特別なこと。大人になり、自分を解放した彼らが子ども時代を振り返る姿に、地方に住み、周囲に自分の思いを打ち明けられずに小さな胸を痛めている男の子たちがどんなに勇気づけられていることだろう。

静かに送っていた余生に再び火が

『スワンソング』監督のトッド・スティーブンスはオハイオ州の小さな町サンダスキー出身のゲイ男性。17歳の時に地元のゲイクラブで見て衝撃を受けた、街で人気のヘアドレッサーのことをいつか映画にしたいと考えていた。10代の監督にとって、彼の存在は「ルポールのドラァグレース」のクイーンたちのように心の支えだったに違いない。本作はその実在のヘアドレッサー、パトリック・ピッツェンバーガーが主人公である。

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