2021年「王座」就位式。和服姿の井山裕太名人(撮影:筆者)

日本囲碁史に輝く「数々の大記録」

 将棋界は藤井聡太五冠(20)が29連勝の強烈デビューから、人気実力ともトップを独走しているが、囲碁界の最強棋士といえば、当時最年少記録の20歳で名人位に就き、その後長らくトップの座に君臨する井山裕太名人(33)だ。

 囲碁界では10歳で棋士となった仲邑菫二段(13)や今年9月1日付でプロになる9歳の藤田怜央くんなど若い棋士が話題だが、早熟なのはトップ棋士になるひとつの要件ともいえる。

 この若きふたりは「英才特別採用」枠で、トップ棋士との試験碁などで合格しているが、井山名人は、いわゆる通常のプロ試験(予選を勝ち抜いた何人かでの総当たりリーグ戦)を受け、小学6年生でプロ入り(趙治勲名誉名人につぐ日本棋院年少記録)の切符をつかんだ。

 以降、井山名人は日本囲碁史のなかでも屈指の棋士として挙げられる活躍を続けている。史上初となる七大タイトルを同時に制覇、しかもそれを2度も達成し、国民栄誉賞を受賞しているのは周知の通りだろう。

 通算獲得タイトル数は69(趙治勲の75につぐ2位)。中でも七大タイトル獲得数56(2位は趙治勲の42)はダントツの記録だ。世界戦ではLG杯世界棋王戦準優勝、テレビ囲碁アジア選手権で優勝を果たしている。

 今年初めには10連覇を目指した棋聖戦で一力遼九段(当時)に3勝4敗で敗れたものの、本因坊戦ではタイトル戦連覇記録史上最多となる11連覇を達成。若手の台頭が著しい中、現在でも「名人」「本因坊」「王座」「碁聖」の四冠を保持する囲碁界の第一人者なのだ。

 賞金ランキングも10年連続1位を継続中で、2015年には史上最高の1億7212万円を獲得。名実ともにトップを走り続けている。

2021年秋に打たれた名人戦で初手を打つ井山名人(撮影:筆者)